
棟梁のホリさん、「今日は瓦屋さんだから」と言って黙々と瓦を積んでいます。
二十代の若い頃、手斧や蚤を使ったりしていた頃の大工さんは何でも熟したそうです。昔から、瓦屋(製作する人、葺く人)・建具・経師、左官屋さんなどの色々な職方は居ましたが、社寺でもない限り民家では大工さんがお施主さんや近所の方との協力で家を建てるのが通常でした。
友人が手掛ける家で私も土壁にする為の泥コネ、その下地になる小舞いかき、構造材に柿渋塗りなどの御手伝いをしたことがありますが(その時の写真が見たい方は、ブログの履歴をさかのぼってください)楽しくも、何かと慣れてない私は段取りが良く無く、竹小舞にも時間がかかっていました。ホリさんは本当に仕事が早く、しかも綺麗な仕上がりです。

外壁の漆喰を剥がし、土壁に下地を打ち、下見板を張る準備をしています。トップライト瓦を乗せるために、瓦を何枚か剥がしてみると、増築部分にトントン板?「増築部分なのに珍しい~」と言うと「今も無いことはないのだけど、ミシン目があるでしょ?40年前のものだとすると縫って繋いだトントン板で、ルーフィングよりも高級なの。良いお宅では使われていることがよくあるの」とホリさん。父よりも少し上の世代ですが、私は現場の事はあまり教えてもらえずに父は亡くなりました。父の場合は、個人邸は稀で、学校や旅館などの施設が多かったので、母が今でも「あそこはお父さんが携わったところなのよ」と路を走っていても懐かしそうに見て居ることがあります。今、初めて知ることが出て、職人さんから学ぶことも出来るのはありがたいことです。
職人さんが解ること、私が解ることで補い合うのは良いことで、またお施主さんも私からの報告や、ブログを読まれてわからない語彙が出てくると、辞書や書籍で調べるのが楽しいと仰って頂いて居て本当に嬉しいことです。


面戸板などは屋根裏に上がった際に左の写真のような状況で新聞紙が詰めてありましたが、上の写真のように「図面の指示通りに取り付けておいたよ」ということで、垂木との間の加工もしていただいて軒の出が少ないところも・・・これで雨の吹込みを防ぐことができます。


とても暑い季節に再生が可能か、状態と既存図を先ずは書くのに屋根裏と床下に潜りました。調査や、既存・新規図面が一通りできるまでは見積もりも取れませんので、どこに施工を依頼するのかは決めていませんでしたからだいぶ時間をかけたと思います。職人さん直接施工になった経緯は構造計画をしていただいた構造事務所を主宰する構造家の増田一眞先生からの紹介です。「本当に近くに良い職人さんが居るから、そのうちね!」といった具合でした。
(床下は左:既存、右:補修後)設計図も意匠(平面・平面詳細・矩計り・各詳細図・特記仕様書・仕上表・建具・展開図・基礎伏・軸組図など)既存・新規図面共に既存を剥がしてみなければわからない部分の可能性を残して書いてありますが、現場で打ち合わせ決める部分が躯体では多くなりました。
現在は躯体工事は過ぎ、仕上げの下地部分の工程に入ってきていますので、これからは既存とは違う部屋の用途で設計したものが徐々に見えてきますからリフォームしているという実感がお施主さんにも、一般の方が見てもわかるようになると思います。